労働契約の成立は、
①労働者は、使用者に対して、「労働提供義務」を約束し、
②使用者は、労働者に対して、労働提供の対償として「賃金支払義務」を
約束すること
によって、成立する双務契約です。
なお、口頭でも成立します。
年次有給休暇(年休・有休・有給)の取得について
①労働者が時季指定権を行使し、②この時季指定権行使を受けて、使用者に「事業の正常な運営を妨げるか」を考慮する時間的余裕があり時季変更権の不行使であった場合には、
③労働者の「労働提供義務」が免除され、つまり「休暇」となる。
④「休暇」となると、労働提供義務の対償として「賃金支払義務」は、労働提供をしていないので生じない。つまり、「ノーワーク・ノーペイ」である。
しかし、「有給」については、⑤年次有給休暇(年休・有給)の条文である労働基準法第39条第7項によって、「賃金支払義務」が生じることになる。
なお、図の「賃金支払義務」の発生について、労働基準法では年次「有給」休暇となっているので、労働基準法第39条第4項の時季変更権の不行使によって「賃金支払義務」が生じるとも考えられます。
しかし、「賃金支払義務」が生じるとしても、(金額等が)抽象的ですし、年次有給「休暇」とする以上、「労働提供義務」の免除および「ノーワーク・ノーペイ」の考えが含まれないと、年次有給「休暇」としての意味合いが損なわれると思われる。
その例として、労働基準法第68条(生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置)いわゆる「生理休暇」があり、「休暇中の賃金は、労働契約、労働協約または就業規則の定めるところによって、支給しても支給しなくても差し支えない」(昭23.6.11 基収第1898号、昭63.3.14 基発第150号・婦発第47号)となっている。
このように通達では、賃金支払の有無は“会社の裁量”若しくは”契約”によって定めることになっていることから、「ノーワーク・ノーペイ」を前提として、
そのため、具体的な金額を定め、使用者に義務を課した条文である労働基準法第39条第7項を根拠に「賃金支払義務」が生じると考えたほうが良いとかんがえたため、上記の説明および図説としました。
●労働契約
労働者が使用者に対して労働することを約し、その労働の対償として賃金を支払う約した双務契約。労働契約を結ぶと、労働者は「労働提供義務」、使用者は「賃金支払義務」を負います。
なお、労働契約は、口頭だけで成立する契約(諾成契約といいます)です。そのため、労働契約書がなくても、労働契約自体は、成立します。
もちろん、労働契約法第4条第1項および第2項において、使用者は、できる限り労働契約書等の書面の交付により、契約内容を確認し、労働者の理解を深めることが求められています。
ただし、労働基準法15条において、「労働条件通知書」の書面交付は義務になっています。
●雇用契約
民法(第623条など)上での定義であり、労働法の定義である上記「労働契約」と実質的に変わりはなく、区別することに実益はありません。
なお、当サイトでは、労働法を前提に解説していますが、上記「労働契約」の表現は、民法第623条に則った記述になっています。
その理由は、年次有給休暇やその他の労働問題を考える際に、労働契約の「労働提供義務」と「賃金支払義務」の双務関係を図示し、その図示を前提に考えたほうが、わかりやすく解説することができるからです(労働契約からみた年次有給休暇(年休・有給)の解説を参照)。
●労働提供義務
労働者が、労働契約を結ぶことによって、契約当事者の使用者に対して、労働を提供する約束(義務)。
●賃金支払義務
使用者が、労働契約を結ぶことによって、契約当事者の労働者から労働(提供)を受けた場合、その対償として、その労働者に賃金を払うこと約束(義務)。
●労働契約の終了・解消
労働契約を終了・解消すると、労働者は「労働提供義務」がなくなり、使用者は「賃金支払義務」がなくなります。
●退職とは
退職とは、「労働契約の解消」を示す用語です。
「労働契約の解消」ですので、労働者は「労働提供義務」がなくなり、使用者は「賃金支払義務」がなくなります。
なお、退職という用語は、「労働契約の解消」を示す用語としては、法的に考える上では、少々抽象的です。
●退職届(とどけ)と退職願(ねがい)の違い
実態として、①辞職となるのか、②合意解約になるのか、この2つの区別が重要ですが、多くの場合、
退職届は①辞職、俗にいう自己都合退職(雇用保険法における離職理由の一つ)
退職願は②合意解約
に対応しているようです。
そのため、
労働者が一方的に労働契約の解約をしたい場合(会社の意向は問題になりません)には、退職届を提出すること、
円満退職を求める場合には、退職願を提出して会社の承諾を得ることを考慮に入れて、どちらが自分の希望かを検討しましょう!!
●労働法における1日
原則、午前0時から午後24時までの暦日を指す。
●労働義務日
労働者が使用者に対する「労働提供義務」を負う日。
また、労働時間とは別の考え方であり、労働義務日の1日(午前0時から24時まで)のなかに、労働時間(例えば、8時間など)を設定する(簡単に言うと“ご飯茶碗”が労働義務日で、“ご飯”が労働時間と考えるとイメージしやすいかな?)。
●労働の免除
労働者が使用者に対する「労働提供義務」について、使用者が労働者に対して、その「労働提供義務」を免除すること。
●休日と休暇の違い
労働契約上、労働義務日でない日を「休日」、労働義務提供を免除された日を「休暇」といいます。
たとえば、月曜日~金曜日の週5日勤務で1日8時間労働(事務職の方が多い)の場合を考えます。
月曜日~金曜日は労働義務日になり、土日(会社によっては祝日も含む)は、もともと休みなので労働義務日でない「休日」に当たります。
他方、例として結婚や葬式などの慶弔休暇の制度がある会社では、水曜日に結婚式があるとすると、そもそも水曜日は労働義務日ですが、結婚という事由があるために労働義務提供を免除した「休暇」となります(もちろん、申請などの手続きは必要でしょう)。
●所定と法定の違い
法律で定められた上限規制を「法定」、契約で定めた(労使間で約束した)条件を「所定」といいます。
例として、パートタイマーの1日の労働時間について考えると、法定は上限規制の「8時間」(労働基準法32条)、所定は約束なので「6時間」など、8時間を以下で労使間で自由に決めることが可能です。
●ノーワーク・ノーペイ
「労働提供義務」を果たさなければ、その労働(提供)の対償としての「賃金支払義務」が生じないこと。簡単に言うと「働かねば、賃金なし」ということができます。
●年次有給休暇(年休・有給)の趣旨
労働基準法コンメンタールでは、「労働者の心身の疲労を回復させ、労働力の維持培養を図るため、また、今日、ゆとりある生活の実現にも資するという位置づけから、休日のほかに毎年一定日数の有給休暇を与えること」と記しています。
ところで、通達では、「年次有給休暇の買上げの予約をし、これに基づいて法第39条の規定により請求し得る年次有給休暇日数を減じないし請求された日数を与えないことは、法第39条の違反である」(昭30.11.30 基収4718号)としています。
このように、年次有給休暇(年休・有給)の趣旨は、主目的が「労働提供義務」の免除による労働力の回復やゆとりある生活の実現であって、副目的として賃金支払義務を定めていると考えることができます。
●時季変更権説
年次有給休暇について、法律上の「与える」とは、①労働基準法第39条第1項等の「年休権の取得(発生)」、②労働基準法第39条第5項の“すでに取得(発生)した年休権の”「時季指定権」、以上の2つに区別する必要があります。
まずは、条文を確認すると
労働基準法第39条第1項
使用者は、その雇入れの日から起算して六箇月間継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に
対して、継続し、又は分割した十労働日の有給休暇を与えなければならない。
労働基準法第39条第5項
使用者は、前各項の規定による有給休暇を労働者の請求する時季に与えなければならない。
以上のように、条文上、赤字で示した箇所のうち、共通する箇所は、「使用者は」、「有給休暇」を「与えなければならない」となっていて、「与える」必要があるのです。
しかし、異なる箇所は、「有給休暇」について、①「労働者に対して・・・十労働日」と②「労働者の請求する時季に」の2つです。
つまり、①第1項の「労働者に対して・・・十労働日」、②第5項の「労働者の請求する時季に」を区別するポイントとなります。
年休の付与
年休権の行使
時季変更権
労働時間
暦日をまたいだ労働時間
無期転換ルールについて、すでに施行されていますが、実際には、条文を解釈し、正確に理解している労務管理担当者は、少ないと思われます。
今一度、条文を紐解き、良く見慣れた図表による理解とリンクできるようにした動画です。
労働契約について、口頭でも成立することを順序を踏まえて説明した動画です。
年休の取得について、文章での説明ではなかなか難しいので、法的にはどのように生じるか順序を踏まえて説明した動画です。
動画は、「時季指定権の行使」を説明したものですが、「年次有給休暇の取得」とした理由には、「年休権の取得(発生)」を含めた時季指定権説全体の説明をすることにより、「時季指定権の行使」の理解を複雑にする恐れがあったため、一般的に「年休の取得」と考えられている「年休権の取得(発生)」後の「実態として、休み、その分の手当てを支払われる」ための法的な流れを説明したものです。
社会保険労務士事務所 松戸 飲食業等中小企業 労使関係 改善 MILK
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